異質の個性が出会って、相互の自主性や独自性を尊重しつつ一定の合意が成り立つかぎりで協力し合う・・・


こういった人間関係の在り方は、一見、理想的な人間関係を示しているようにみます。


しかし、実は商品社会の基本原理を人間関係の面にも投影したものにほかなりません。


商品交換というのは、相互に異質の商品を持ち寄って、そして合意が成立するかぎりで・・・・


つまりは双方のためになるという意味での一定の共通利害が成り立つかぎりで行なわれるものだからです。


他者の、その当人にとってのかけがえのなさを十分に認めることは、認める側に大変な〈力〉を要することです。


単なる心の余裕とか寛容さだけではすまないものです。


・・・というのも、それは単に他人たちと接触したり出会ったりした際に、そのかぎりでかれらの意見や個性を尊重するというにとどまりません。


表には出ていないけれどもその背後にあるであろう見えざる諸事情にも、当人の意向や利害に反しない範囲で可及的最大限、思いを及ぼし配慮することにほかならないからです。


まずはそういう認める〈力〉をもっているという点においてこそ、おのれのかけがえのなさが実証されるともいえます。


現代文明の圧倒的な人間解体作用に抗して、「自分」の解体が進むなかでなおもそのような〈力〉をよく発揮しうる人物は、当節きわめて例外的な存在といわなければなりません。

今日、「愛」の対象の代替部品化はドラスティックに進行しつつあります。


ヒトの代わりにペットやぬいぐるみに「愛」をそそぐというケースは、基本的にはドライヴィークル論の文脈で説明がつくことではあります。


しかし、「愛」の対象範囲が動物ないしモノにまで拡大したという点で代替部品化の極限にまで行きついた姿を示すものでもあります。


「愛」の対象の代替部品化が急激に進行しつつあるのは、結局のところ、かけがえのない「自分」という人間主体が解体しつつあることに対応する現象であるといえるでしょう。


ただし、かけがえのない「自分」というものを強調するからといって、別にミーイズムを奨励しようというのではありません。


かけがえのない「自分」を確保するためには、他人たちのかけがえのない「自分」をも認めること・・・


お互い同士がかけがえのない存在なのだという共通認識が必要です。


こういう共通認識、相互承認のないところでは、おのれのかけがえのなさをいくら主張しても他人からみれば粗大ゴミ同然という状態から脱しきれないでしょう。


昨今、「個性」の主張がさかんです。


しかし個性というのは本質的に関係概念であって、同時に他人たちの個性をも認めることなしには原理的に成り立たないはずのものなのに、相も変わらずミーの「個性」ばかりを声高に主張してやまないのです。


これよりは質の高い、他人の「個性」をも認めるという立場があります。


しかしこれとても、他者の、その当人にとってのかけがえのなさを認めるというには程遠いものでしょう。


なぜなら、後者は単に自分の意見とは異なる意見をも尊重するとか異質の個性をも認めるというにとどまらず、たとえ自分と同じ意見、同質の個性であっても、したがって自分の独自性を危うくするものであっても・・・


それがその当人にとってのかけがえのなさであることを認めることにほかならないからです。


必ずしも相手を「かけがえのない存在」として求めているわけではない。


女もしくは男を代替可能なエネルギー放出対象として利用しているケースが少なくないのです。


・・・そういうたぐいの「愛」は、ここで「連帯」と並べて取り上げるに値しません。


相手を代替可能なエネルギー放出対象としてではなく、ほんとうにかけがえのない存在として「愛」しているのなら・・・


たとえ何らかの理由によって関係が途絶えたとしても終生ずっとその人のことを思い続け、その意味での「愛」が持続するのでなければなりません。


それが、かけがえのない相手としてその人を「愛」していることの証となるのです。


そうではなしに、生別であれ死別であれ、ある相手Aと別れたあと別の相手Bと「愛」の関係に入るというようなことになれば。


少なくとも形の上では、「あちらがダメならこちらがあるさ」というありきたりのパターンになってしまいます。


言いわけは無用。


相手Bに鞍替えしたのは、精神的、肉体的、あるいは経済的なあれこれの理由があってのことでしょう。


それはそれで多くの場合もっともな理由であるにちがいありません。


ですから、ここではそういう鞍替えを非難したりなじったりするつもりはありません。


今日では、それはごく当たり前の一般的な在り方です。


いえ、今日に限りません。


パターンとしては昔からそうです。


ただ、それが大量現象として生じているのがまさに今日的なのです。

愛では、人間が交換部品化している状態を革めるにはどういう手立てがありうるでしょうか。


他のだれとでも容易に交換可能であること、エネルギー個体としてささやかな量的存在でしかないこと・・・


こういう状態を克服した状態というのは、だれもがお互いにかけがえのない存在であるという状態でしょう。


愛と友情と連帯こそは交換部品化を拒絶する思想の拠点ともなり目標ともなるものです。


愛.友情・連帯という結びつきのなかでこそ、ヒトは「かけがえのない存在」として生きることができます。


愛と友情と連帯の三つに限定する必要はないけれども・・・


少なくともこれら三つのものは人間関係の、したがって人間存在のあるべき姿を示すものとして現代文明の乗り越え方向を指し示すイデーたりえるものです。


イデーといっては大仰に聞こえるかもしれません。


愛。


友情。


連帯。


・・・いずれもごくありふれた言葉であるだけに、これらをことさらに持ち出すには若干の説明を要します。


「愛」といっても、男女の性愛の今日的形態は多分化しています。


今日、人間そのものの位置と状態を問おうとする議論はすべて、ある意味では両層把握の枠内のなかにさまざまな色模様を描きながらすっぱりと収まるのものです。


そのつどどのような観点からどのような色合いをもつ人間論を構築するにせよ・・・


まずはそうした両層把握の枠組の全体を見通しておくことが肝要でしょう。


ちなみに、ハーバマースのいう「社会統合」と「システム統合」とを、ここでいう表層形態と深層構造とに関連づけ対応づけて考察するといったアプローチをとれば、議論はもっとアカデミックな色調を帯びるでしょう。


しかし、ここではそういうことは意図していないので割愛します。


「ドライヴィークル」論とここでの「動員」論とはもちろん密接に関連しています。


同じひとつの事態を別々の概念用具を用いて言い表わしたにすぎません。


エネルギー個体にまで解体されてそれが動員主体の存在しない形で動員されるというこの粒子性と受動性・・・


これこそが現代人の不安や不確実性の根源をなしており、それがまたあれこれのドライヴィークルを追い求めさせることになるのです。


「連帯-集団の成員が、利害関心、目的目標、あるいは原理原則に関して王者の合意(ローヤル・アグリーメント)を結ぶこと」


「いくらきみが頭痛に病んでも世間は改まりはしないよ。


時代の風潮に対するきみの大げさな義憤がかえって世間から馬鹿にされることになるのだ。」


「いよいよ結構だ、それが何だ!」


「建築の自由」「土地利用の自由」とその制限に関する社会的合意について。


これは、一定の都市的整備水準を確保し、都市環境を維持することは当然に必要であって、そのために「建築の自由」「土地利用の自由」に一定の制限、制約が加わることはやむを得ないという合意形成がなされうるかが基本的な問題です。


これは、私権の制限と、公共の福祉の実現にかかわる極めて深い問題です。


さまざまな要因が複雑にからむ問題なのです。


一方、都市環境の悪化と、これに対する住民の関心も高まっており、この点に関する合意形成は緊要度の高い課題であるものと思われます。


そして、土地・住宅政策に関する条件整備について。


以上の合意形成とも関連して、土地政策、住宅政策をどこまで拡充・強化しうるかが、基本的な条件です。


狂乱土地ブームで高値安定した土地価格は、住宅供給、公共施設整備のいずれの側面においても重大な障害となっています。


今後の土地政策は、市街地整備の基礎的条件にかかわるものでしょう。


また、自治体の財政財源の強化を。


とくに、住宅および住宅地形成の側面で行なうことも今後の重要な課題でしょう。


これらについて、一定の社会的合意がなされ、条件がととのえられることが、課題の構図に示した制度の改善の基本的条件です。


この基本的条件がどの程度つくられるかによって、制度改善の幅の大小も規定されるでしょう。


・住宅、市街地の基礎的整備水準についての社会的合意


端的にいえば、土地区画整理による程度の基盤整備がされ、一定規模以上の敷地と延床面積の住宅が保障されることが、住宅、市街地の基本的条件であるという合意形成がありうるかということです。


現実に人々が選択しうる水準は、高騰した地価および建築費と所得との関係から、一般には上記よりもはるかに低い水準であるとしても、上記の水準の確保が、人々の強い願いであり、コンセンサスであるならば、これを実現する仕組みの形成が欠かせないこととなるでしょう。


一方、人々が、都市的整備水準に無関心であるならば、これに関する合意形成をまたなければなりません。


もうひとつの側面は、公共事業と環境保全に関する事業主体と住民との評価の格差です。


これは、基礎的整備水準についての評価の格差でもあるのです。


この評価の差異は、現在の公共事業の難航の原因となっています。


いずれにしても、住宅、市街地の基礎的整備水準についての合意形成は基本的な出発点です。



都市計画制度が直面する矛盾をのりこえるためには、次の点への対応が欠かせないでしょう。


1)個別の建築が担保すべき基礎的な要件(たとえぽ最小限画地)の適正化と個別の建築が担保すべき基礎的要件と都市形成上の基礎的要件の整合化。


2)個別の建築、個別の開発が、一定水準の地区形成に結びつくための仕組みの必要性。


3)上記、地区形成の仕組みに対応する地区整備のための事業手法の拡充。


4)地区形成と市街化区域内の効率的集約的公共投資を整合させるための、市街化区域内の計画的段階的市街地形成の枠組みの必要性。


これらは、いずれも、建築、都市、あるいは土地利用についての、人々の生活と意識などの社会的側面、私権と公的介入の関係とそのあり方などの法的諸側面、整備の費用と公私の負担能力など経済財政的諸条件にかかわるものであることはいうまでもないでしょう。


宅地審議会の第6次答申の4地域区分は、そうした秩序ある都市形成をねらうものでした。


しかし、現行都市計画法の区域区分では、これが2地域区分に統合された結果、スプロールを許容することとなっているのです。


建築行為は、基盤整備済みの地区に限定すること。


基盤整備は、計画的な新市街地形成または既成市街地整備の段階的枠組みにしたがって行なわれること。


この2つの条件が制度的に満足されれば、秩序ある都市形成が保障されると共に、地区計画の動機づけとしての役割をも果たすこととなるでしょう。


そして、関連する計画体系の整備計画について。


体系上は、都市基本計画、土地利用計画が制度上に明確に位置づけられ、それらと地区計画が合理的関係に置かれるべきですが、現段階では、まだそこまで行っていません。


・・・以上に述べた課題の構図は、前項で述べた市街地整備と現行制度との諸矛盾を生み出している基本的要因です。


しかし、さらに基本的1こは、上記の要因とも関連して住宅とその環境の整備を、都市計画制度の中で如何に位置づけるかが問題なのです。


これに関しては、住宅基本法、あるいは住居法についての論議や課題があります。


ここにあげた課題の構図は、相互に関連するものです。



結果として、既成市街地、既スプロール地域、未市街化地域のさまざまな特性に即した地区段階の規制・事業の手法を体系的に生み出すモメントを失わせています。


また、本来、開発負担の問題、市街化区域内農地の保全の問題は、地区形成の仕組みの中で対応すべき部分を多く含んでいます。


住宅と居住環境整備の問題は、地区形成の仕組みによって対応すべき中心的課題です。


地区形成のために地区計画を活用し、現行事業手法および新規の事業手法を地区整備事業として総合化する方向での検討は、今後、ますます重要になるでしょう。


次に、都市形成の秩序化の課題です。


仮に、地区計画が制度的に位置づけられ、その実現を保障する手段が与えられたとします。


その場合でも、現状では市街化区域内で地区単位の整備のスプロールが発生するおそれがあるのです。


さらに、そうした地区計画を動機づける都市計画の枠組み自体がないことにも問題があります。



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