異質の個性が出会って、相互の自主性や独自性を尊重しつつ一定の合意が成り立つかぎりで協力し合う・・・
こういった人間関係の在り方は、一見、理想的な人間関係を示しているようにみます。
しかし、実は商品社会の基本原理を人間関係の面にも投影したものにほかなりません。
商品交換というのは、相互に異質の商品を持ち寄って、そして合意が成立するかぎりで・・・・
つまりは双方のためになるという意味での一定の共通利害が成り立つかぎりで行なわれるものだからです。
他者の、その当人にとってのかけがえのなさを十分に認めることは、認める側に大変な〈力〉を要することです。
単なる心の余裕とか寛容さだけではすまないものです。
・・・というのも、それは単に他人たちと接触したり出会ったりした際に、そのかぎりでかれらの意見や個性を尊重するというにとどまりません。
表には出ていないけれどもその背後にあるであろう見えざる諸事情にも、当人の意向や利害に反しない範囲で可及的最大限、思いを及ぼし配慮することにほかならないからです。
まずはそういう認める〈力〉をもっているという点においてこそ、おのれのかけがえのなさが実証されるともいえます。
現代文明の圧倒的な人間解体作用に抗して、「自分」の解体が進むなかでなおもそのような〈力〉をよく発揮しうる人物は、当節きわめて例外的な存在といわなければなりません。